論文抄録

第121巻第5号

症例報告

重粒子線治療から2年後に局所再発を来し,眼球摘出に至った脈絡膜悪性黒色腫の1例
小竹 修, 後藤 浩, 上田 俊一郎, 馬詰 和比古
東京医科大学臨床医学系眼科学分野

背 景:本邦では近年,脈絡膜悪性黒色腫に対する眼球温存療法として重粒子線治療が普及しつつある.重粒子線治療後に眼内で局所再発を来し,眼球摘出に至った1例を経験したので報告する.
症 例:64歳,男性.左眼の脈絡膜腫瘍が疑われ,東京医科大学眼科を初診となった.左眼底に腫瘍を認め,諸検査の結果,脈絡膜悪性黒色腫の診断に至り,重粒子線治療が行われた.その後の経過は良好であったが,治療から2年3か月後に局所再発がみられたため眼球摘出術を行った.病理組織学的には初発病巣はメラニン色素を豊富に含み,HMB-45,Melan-A,S-100蛋白質が陽性であった.一方,再発病巣はメラニン色素に乏しく,HMB-45,Melan-A,S-100蛋白質の染色性が低下していた.眼球摘出4か月後に肝転移が発見され,緩和治療に移行した.
結 論:重粒子線治療後であっても脈絡膜悪性黒色腫は局所再発することがある.再発病巣では初発病巣と異なる病理組織像を呈する可能性がある.(日眼会誌121:419-424,2017)

キーワード
脈絡膜悪性黒色腫, 重粒子線治療, 局所再発, 病理組織
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〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学臨床医学系眼科学分野 小竹 修
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