論文抄録

第121巻第8号

症例報告

小線源治療後に眼内出血から眼球摘出に至った脈絡膜悪性黒色腫と脈絡膜血管腫の重複腫瘍症例
佐々木 麻衣子, 髙橋 寛二, 木村 元貴, 三木 克朗, 中内 正志
関西医科大学眼科学教室

目 的:小線源治療後に腫瘍の再増殖から眼内出血を来し眼球摘出に至った脈絡膜悪性黒色腫(CM)と,脈絡膜血管腫の同一眼重複例を報告する.
症 例:59歳,男性.左眼の中心暗点,変視症を自覚し受診した.左眼の視神経乳頭上方に丈の高い褐色の脈絡膜隆起,黄斑耳下側になだらかな橙赤色の脈絡膜隆起を認め,画像診断からCMと脈絡膜血管腫の同一眼重複例と診断した.CMはCOMS分類の中腫瘍で全身転移はなく患者が眼球温存を希望したため,小線源放射線治療が施行された.CMはいったん退縮したが18か月後に急速に増大し,腫瘍からの大量出血によって網膜全剝離を生じて光覚が消失したため,治療後20か月で眼球摘出術を行った.病理組織ではCM内の腫瘍血管の拡張と破綻が特徴的で,他部位の脈絡膜に海綿状血管腫がみられた.
結 論:CMと脈絡膜血管腫の同一眼重複例の報告はなく,まれな症例であった.CMの腫瘍血管拡張は,放射線による影響の可能性も考えられた.(日眼会誌121:593-600,2017)

キーワード
脈絡膜悪性黒色腫, 脈絡膜血管腫, 小線源放射線治療, 眼球摘出, 眼病理
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〒573-1191 枚方市新町2-3-1 関西医科大学附属病院眼科学教室 佐々木 麻衣子
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