論文抄録

第122巻第12号

臨床研究

光干渉断層計を用いた網膜静脈分枝閉塞症における動静脈交叉部形態の観察
佐藤 尚栄, 田中 慎, 稲﨑 紘, 佐藤 新兵, 井上 麻衣子, 山根 真, 門之園 一明
横浜市立大学大学院医学研究科視覚再生外科学

目 的:光干渉断層計(OCT)を用いて網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の動静脈交叉部を観察し,交叉部形態の特徴を調べる.
対象と方法:動静脈交叉部を同定できたBRVOの連続症例111例111眼を対象とし,OCTを用いて動静脈交叉部を中心に2方向撮影を行い,交叉部の動静脈交叉パターン,交叉部静脈の狭窄の有無,交叉部静脈内血栓の有無と存在部位を観察した.
結 果:閉塞部の動静脈交叉パターンは動脈が静脈の上を走行するAVパターンが55眼(49.5%),静脈が動脈の上を走行するVAパターンが56眼(50.5%)であった.交叉部静脈の狭窄は9眼(8.1%)でみられ,すべてVAパターンで,内境界膜と交叉部動脈に圧迫されていた.102眼(91.9%)では交叉部静脈の湾曲はみられるものの内腔は保たれていた.交叉部静脈内血栓は15眼(13.5%)でみられ,内訳はAVパターン55眼中2眼(3.6%)とVAパターン56眼中13眼(23.2%)であった.血栓の部位は,交叉部の上流が3眼,交叉部が4眼,下流が5眼,交叉部から下流にまたがるものが1眼,交叉部の上流から下流にまたがるものが2眼であった.
結 論:従来AVパターンが多いといわれていたが,約半数の動静脈交叉部はVAパターンであった.OCTはBRVOにおける動静脈交叉部形態の観察に有用であった.(日眼会誌122:920-927,2018)

キーワード
網膜静脈分枝閉塞症, 動静脈交叉部, 狭窄, 血栓, 光干渉断層計
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