論文抄録

第122巻第4号

症例報告

硝子体手術により改善した眼内レンズ挿入後のwaxy vision
眞野 福太郎, 高岡 源, 眞野 富也
多根記念眼科病院

背 景:今回我々は,回折型多焦点眼内レンズ(IOL)挿入後に,waxy visionを強く訴えた患者に対して,硝子体手術を行い,硝子体混濁の除去により症状の劇的な改善を認めた症例を経験したので報告する.
症 例:60歳男性.左眼視力低下を主訴に来院され,左眼により強い両眼の白内障を認め,両眼の白内障手術を行い多焦点IOLを挿入した.術後より左眼のwaxy visionを訴え続け,単焦点IOLへの交換を行ったが症状の改善が得られなかった.経過中同じ回折型多焦点IOLを挿入したにもかかわらずまったく不満のなかった右眼に突然左眼と同様のwaxy visionを訴えたことから後部硝子体剝離の進行に伴い生じた硝子体混濁がwaxy visionの一因ではないかと考え,両眼の硝子体手術を行ったところ,症状およびコントラスト感度の劇的な改善を認めた.
結 論:本症例は,回折型多焦点IOL挿入によるコントラスト感度の低下に,後部硝子体剝離に伴う硝子体混濁による影響が重なったことで,さらなるコントラスト感度の低下を来し,強い不満につながった可能性が考えられる.多焦点IOL挿入の術前だけでなく術後もコントラスト感度の測定や,硝子体混濁の性状を観察することが重要と考えられた.(日眼会誌122:306-311,2018)

キーワード
多焦点眼内レンズ挿入術, waxy vision, 眼内レンズ入れ替え, 硝子体手術, コントラスト感度
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〒550-0024 大阪市西区境川1-1-39 多根記念眼科病院 眞野 福太郎
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