目 的:高齢者の,他覚的回旋偏位角〔視神経乳頭中心と中心窩を結ぶ線が水平線と成す角度(disc-fovea angle:DFA)〕を計測し,より若年者と比べて加齢による変化があるかどうか,左右眼あるいは優位眼により差があるかを調べる.
対象と方法:76歳以上の患者で,良質の眼底写真を得られた患者を対象とした.視力0.6未満の患者,斜視や両眼視機能に影響のある疾患を患っている患者は除外した.得られた眼底写真からDFA値を計測し,既発表の65歳67名のDFA値と比べた.優位眼は穴あき法で同定した.
結 果:45名の高齢者群(年齢の平均値±標準偏差:81.5±4.0歳)から得られた90枚の眼底写真からDFA値を計測した.右眼のDFAは7.3±4.3度,左眼のDFAは10.0±4.1度であった.後者は前者よりも有意に大きかった(p<0.01).左眼のDFAは,65歳群の左眼DFA(7.8±3.2度)に比べ大きかった(p<0.01).31名に優位眼の同定検査を行い,優位眼が右眼であるのが18名,左眼が9名,不定が4名であった.優位眼のDFA(6.9±3.6度)は非優位眼のDFA(10.6±4.7度)よりも有意に小さかった(p<0.01).
結 論:76歳以降の高齢者では65歳に比べ左眼DFAは増加している.高齢者の優位眼DFAは非優位眼DFAよりも小さい.高齢者の右眼DFAが左眼DFAよりも小さいのは,右眼優位の人が多いためと推定される.(日眼会誌122:499-502,2018)