網膜静脈閉塞症(RVO)の視機能に深く関与する合併症として,黄斑浮腫と黄斑虚血が挙げられる.現在,RVOに伴う黄斑浮腫の治療は抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)療法が主流となり大幅な視力改善を期待できるようになったが,どのような症例は視細胞障害や黄斑虚血が強いのか,などについては未だ不明な点が多い.
我々は黄斑浮腫による視細胞障害の病態機序と視力予後,黄斑虚血の存在を予測する所見,抗VEGF療法に抵抗を示す症例の特徴について検討した.①光干渉断層計(OCT)で観察されるellipsoid zoneの中心窩での隆起(foveal bulge)は視細胞の健常性を示す所見で良好な視力予後と関連することを報告した.②OCT画像の検討によって,外境界膜の破綻部位を通って滲出液中のリポ蛋白質などが通過・沈着し,視細胞障害を来すことを明らかにした.③黄斑浮腫眼のOCTで神経線維層内に低反射腔がみられる症例は,その後対応する部位に網膜無灌流領域が形成されていることを明らかにし,黄斑虚血の存在を早期に予測できる所見であると報告した.④毛細血管瘤によって引き起こされる黄斑浮腫は抗VEGF療法に抵抗しやすいことを明らかにした.OCTをはじめとする眼底イメージングの活用はRVOの病態理解とそれに基づく治療戦略につながると考えられた.(日眼会誌123:1038-1053,2019)