論文抄録

第123巻第6号

臨床研究

腱膜性眼瞼下垂に対する経結膜挙筋腱膜タッキングの治療成績
松田 弘道1), 酒井 勉1), 中野 匡2)
1)東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科
2)東京慈恵会医科大学附属病院眼科

目 的:腱膜性眼瞼下垂に対する経結膜挙筋腱膜タッキングの治療成績と合併症を検討する.
対象と方法:2017年1月から2018年3月までに,腱膜性眼瞼下垂に対して経結膜挙筋腱膜タッキングを施行した60例109側を対象とした.手術は瞼板上端から2 mm上方の結膜を切開し,挙筋腱膜からMüller筋を鈍的に剝離後,挙筋腱膜後面に通糸して瞼板前面に縫合固定した.最終来院時におけるmargin reflex distance(MRD):2 mm以上4.5 mm以下,MRD左右差:1 mm以下,自然な眼瞼のカーブ形状のいずれの項目も満たした場合に成功例と定義した.
結 果:手術成功例は54例(90.0%)であった.再発(MRD:2 mm未満)は5例(8.3%)であった.手術合併症は,縫合糸の断端が創部より露出していたことによる角膜上皮欠損を2側に認めたが,露出部の糸切りを追加後に改善した.術後にドライアイが悪化した例はなかった.
結 論:経結膜挙筋腱膜タッキングは腱膜性眼瞼下垂に対する安全で有用な手術法である.(日眼会誌123:706-711,2019)

キーワード
経結膜, 挙筋腱膜, タッキング, 腱膜性眼瞼下垂
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