論文抄録

第123巻第7号

総説

日本における過去21年間の眼科医療の推移
千原 悦夫
千照会千原眼科

日本における眼科各専門分野と全体の手術件数,医師数,医療費,および各専門分野の手術医療費が眼科総手術医療費に占める割合の変遷を調べるために,1996年から2016年の21年間の厚生労働省の社会医療診療行為別統計,医師・歯科医師・薬剤師調査,および厚生労働省医療施設数調査からデータを抽出し検討した.
日本における眼科手術件数は1996年から2016年までに全体で40.2%増加したが,各専門領域手術数の内訳では硝子体手術の増加が1,089%増と最も大きく,次いで白内障手術が168%,緑内障観血手術が95%,網膜凝固術が29.6%伸びている.一方,外眼部手術は3.5%,強角膜手術が39.8%,緑内障凝固術が25.8%減少した.
眼科医数は21年間で19.7%増え全体的には漸増したが,全体の医師数の増加率32.6%と比べると増加率は低い.勤務先別で特徴的なのは病院勤務医が少ないことで,2016年における日本全国の病院数8,442に対して病院に勤務する眼科勤務医の数(医育機関1,924名,一般病院勤務2,782名)は非常に少ない.
日本における眼科総医療費は過去21年間に93.8%増であり,医科総医療費の伸び76.6%,眼科手術医療費の伸び78.8%とほぼ並行して増加しており,眼科総医療費は21年にわたって医科総医療費の4%前後を占めている.
眼科手術医療費の中で白内障手術は2016年に59.1%を占め最大であり,これに網膜硝子体手術の17.6%,網膜凝固の10.7%が続き,これら3項目で眼科手術医療費の87.4%を占める.白内障手術の医療費が眼科手術医療費に占める割合は21年間常に1位で増えているが,手術以外の白内障診療費は逆に大幅に減少し,外来診療を含めた白内障ケア(手術,検査,投薬などを総括)にかかる医療費は1996~1998年の平均と比べると2016年には86.1%(13.9%減)に縮小した.白内障ケアの医療費が眼科総医療費に占める割合は1996年の43.1%から2016年には19.4%へと大幅に縮小した.(日眼会誌123:745-763,2019)

キーワード
眼科手術数, 眼科医数, 眼科医療費, 推移, 日本
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