背 景:眼球鉄症において網膜に器質的な細胞障害が起こることは知られているが,その変化を光干渉断層計(OCT)で詳細に捉えた報告は少ない.今回,OCTで網膜の構造変化を認め,異物除去により改善がみられた眼球鉄症の1例を経験したので報告する.
症 例:34歳,男性.電動ドリルで穴を開ける作業中に左眼に異物が当たったが,受傷後5か月間眼科を受診せず,放置していた.その後,左眼の視力低下を来し,当院を受診した.左眼の矯正視力は(0.9),硝子体は軽度混濁し硝子体腔に浮遊する異物を認めた.OCTで網膜の輝度変化と肥厚,foveal bulgeの消失が確認され,網膜電図の杆体・錐体最大応答はa波,b波の振幅が減弱した陰性型を示し,律動様小波は強い減弱を示した.杆体応答および錐体応答は強く減弱し,ほぼ消失型であった.手術による異物摘出後,左眼の矯正視力は(1.5)に回復し,OCTで確認された網膜の輝度変化や肥厚,foveal bulgeの消失は徐々に改善したが,網膜電図では振幅異常が残存した.
結 論:眼球鉄症ではOCTで網膜の輝度変化と肥厚,foveal bulgeの消失が確認されることがある.異物摘出後にこれらの所見が消失することは,網膜の輝度変化や肥厚,foveal bulgeの消失が眼内異物から遊出した鉄成分により生じることを示唆している.(日眼会誌123:771-776,2019)