論文抄録

第123巻第9号

臨床研究

近視性黄斑分離に対する耳側強膜短縮併用硝子体手術の36か月経過
馬場 隆之1), 田中 住美2), 新沢 知広1), 山本 修一1)
1)千葉大学大学院医学研究院眼科学
2)田中住美アイクリニック

目 的:近視性黄斑分離に対する,耳側強膜短縮を併用した硝子体手術の36か月経過を報告する.
対象と方法:千葉大学医学部附属病院にて2013年11月から2015年11月までの期間に近視性黄斑牽引症に対して手術を行った11例11眼(女性10名,男性1名)を対象とした.全例で耳側強膜短縮を併用した硝子体手術を行い,内境界膜は剝離しなかった.術前から術後36か月までの視力,眼軸長,乱視量,光干渉断層計で測定した中心網膜厚,網膜剝離の高さ,眼球壁湾曲度を検討した.
結 果:視力は術前0.72±0.28 logMAR(平均値±標準偏差)から術後36か月の時点で0.49±0.44 logMARとなり(p=0.092),7眼(64%)で術前よりも改善していた.眼軸長は29.4±1.4 mmから術後36か月では28.5±2.0 mmと,術前よりも短かった(p=0.003).中心網膜厚,網膜剝離の高さは術後有意に減少し,術後36か月まで増加はみられなかった.1眼で近視性脈絡膜新生血管が発生し,抗血管内皮増殖因子薬による治療を行った.
結 論:近視性黄斑分離の症例に対して,耳側強膜短縮を併用した硝子体手術を行った.術後36か月まで,再発はなく全例で黄斑分離・剝離は改善した.強度近視特有の合併症の発生の可能性もあるため,術後長期にわたる経過観察が重要と考えられた.(日眼会誌123:924-931,2019)

キーワード
近視性黄斑分離症, 耳側強膜短縮, 硝子体手術, 後部ぶどう腫, 黄斑円孔
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