論文抄録

第124巻第10号

臨床研究

線維柱帯切開術ab externoとKahook Dual Bladeを用いた線維柱帯切開術の術後成績
廣岡 一行1), 合田 衣里奈2), 木内 良明1)
1)広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学
2)香川大学医学部眼科学教室

目 的:線維柱帯切開術(TLO)ab externoとKahook Dual Bladeを用いた線維柱帯切開術(KDBを用いたTLO)の術後成績を比較すること.
対象と方法:2015年12月から2018年10月までにTLO ab externoあるいはKDBを用いたTLOを施行した症例のうち術前眼圧が18 mmHg以上であったTLO ab externo 64例64眼とKDBを用いたTLO 73例73眼に対して傾向スコアマッチングを行った結果,31眼ずつが抽出された.術後成績はKaplan-Meier生命表法を用い,術後眼圧が21 mmHg以下で眼圧下降率20%以上を成功とした.
結 果:術前,術後6,12か月の眼圧(mmHg)はTLO ab externoで23.5±5.2,15.7±4.0,15.4±4.6であり,KDBを用いたTLOで22.7±4.9,14.7±3.6,15.1±4.6であり,両術式とも眼圧は有意に下降したが,術式間での差は認めなかった.術後12か月での生存率はTLO ab ex ternoが79.9%,KDBを用いたTLOが62.6%であった(p=0.38).前房出血と一過性高眼圧はTLO ab ex ternoで6眼と9眼,KDBを用いたTLOで5眼と8眼に認めた.
結 論:TLO ab externoとKDBを用いたTLOの術後成績に差はなく,また前房出血や一過性高眼圧などの術後合併症の頻度にも違いはみられなかった.(日眼会誌124:753-758,2020)

キーワード
線維柱帯切開術ab externo, Kahook Dual Blade
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