論文抄録

第124巻第10号

臨床研究

シングルピース疎水性アクリル眼内レンズ挿入術後早期の屈折誤差変化に関与する因子
林 俊介1)2), 吉田 起章3), 林 研3), 根岸 一乃2), 坪田 一男2)
1)国立病院機構埼玉病院眼科
2)慶應義塾大学医学部眼科学教室
3)林眼科病院

目 的:シングルピースアクリル眼内レンズ(SP-AIOL)挿入後に,屈折誤差がどのように変化するかを調べ,変化の要因として何が関連しているか検討すること.
対象と方法:4種類のSP-AIOL(Alcon SN60WF,参天製薬W-60R,HOYA XY-1,AMO ZCB00V)挿入術予定の217眼,217名を対象とした.術後1日,1か月,2か月の屈折誤差と屈折誤差絶対値を計算し,経時的に変化するかどうかを調べた.また,前房深度,平均角膜曲率(Ave K),中心角膜厚,眼軸長,網膜中心窩厚を測定し,重回帰分析で,何が屈折誤差に有意に関与する因子か検討した.
結 果:平均屈折誤差は,術後1日~1か月に-0.3516 diopter(D),1か月~2か月に-0.0531 Dの近視化を示し,両期間ともに変化は有意であった(p≦0.0127).誤差絶対値も,術後1日から1か月の間に有意に減少した(p<0.0001).屈折誤差変化に有意に関連する因子は,前房深度,Ave K,中心角膜厚,眼軸長の変化であった.4種IOLを比べると,SN60WFの変化が,ほかのIOLに比べ有意に小さかった(p≦0.0006).
結 論:SP-AIOL挿入後,屈折誤差は主に術後1か月までに有意に近視化するが,それには前房深度,Ave K,中心角膜厚,眼軸長の変化が関連している.SP-AIOLの中でも,屈折誤差変化量に差がある.(日眼会誌124:759-764,2020)

キーワード
白内障手術, シングルピースアクリル眼内レンズ, 眼内レンズ度数予想屈折誤差, 前房深度, 角膜曲率
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