論文抄録

第124巻第10号

臨床研究

裂孔原性網膜剝離に対する手術方法と手術成績の変遷
山田 健司, 伊東 裕二, 佐野 公彦, 加藤 悠, 北 善幸, 廣田 和成, 厚東 隆志, 井上 真, 平形 明人
杏林大学医学部眼科学教室

目 的:小切開硝子体手術(MIVS),広角観察システム,高速カッターの普及による裂孔原性網膜剝離(RRD)と増殖硝子体網膜症(PVR)の術式と治療効果を検討する.
対象と方法:RRDとRRD長期経過後に発症したPVR(Grade C以上)に対し,2014年4月からの3年間に初回手術を施行した1,218例1,249眼(A群)と,2008年4月からの3年間に初回手術を施行した1,011例1,056眼(B群)で,術前因子,術式と手術成績を比較した.
結 果:RRDに対する術式は,A群ではB群と比較して硝子体手術(PPV)の割合が有意に多く,PVRでは有意差はなかった.偽水晶体眼,強度近視,萎縮円孔,単一裂孔かつ単一象限剝離,多発裂孔,下方弁状裂孔に対しての術式は,B群と比較してA群で有意にPPVの割合が多かった.家族性滲出性硝子体網膜症,アトピー性皮膚炎に伴うもの,萎縮円孔では両群で強膜バックリングが多く選択されていた.初回網膜復位率は,RRDに対するPPVにおいてA群がB群より有意に高かった.PVRでは差がなかった.最終復位率はRRD,PVRともに両群間で差はなかった.
結 論:RRDにおいて,MIVSの登場や広角観察システム,高速カッター導入によりRRDの初回手術に対するPPVの選択が増加したと考えられた.またRRDに対するPPVの初回網膜復位率が向上していた.RRD,PVRともに最終網膜復位率は同等であった.(日眼会誌124:776-782,2020)

キーワード
裂孔原性網膜剝離, 増殖硝子体網膜症, 強膜バックリング, 硝子体手術, 網膜復位
別刷請求先
〒181-8611 三鷹市新川6-20-2 杏林大学医学部付属病院眼科 伊東 裕二
itoyuji@eye-center.org