背 景:従来,虹彩新生血管の評価は細隙灯顕微鏡と蛍光造影で行われてきたが,正確な評価や頻繁な評価は困難であった.今回我々は,前眼部optical coherence tomography angiography(OCTA)を用いて虹彩新生血管を経時的に評価した2症例を報告する.
症例1:62歳男性.増殖糖尿病網膜症に伴う硝子体出血に対して経毛様体扁平部硝子体切除術,術中汎網膜光凝固術を施行した.術前に前眼部OCTAで瞳孔縁と3時方向の虹彩に虹彩新生血管を認め,術後徐々に退縮していく様子が観察できた.
症例2:75歳男性.虚血型網膜中心静脈閉塞症に併発した黄斑浮腫と血管新生緑内障に対して抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射を施行した.血管新生緑内障を発症する以前より前眼部OCTAでは瞳孔縁から6時方向にかけて血管描出が確認され,また抗VEGF薬硝子体内注射後には虹彩新生血管の退縮が観察できた.
結 論:前眼部OCTAを用いて虹彩新生血管を経時的に評価することは可能であり,血管新生緑内障の早期診断,治療効果判定に有用な検査手段の一つではないかと考えられた.(日眼会誌124:802-807,2020)