論文抄録

第124巻第11号

総説

滲出型加齢黄斑変性治療の臨床エビデンスと実態
髙橋 寛二1), 大島 裕司2), 大中 誠之1), 古泉 英貴3), 丸子 一朗4), 安川 力5)
1)関西医科大学眼科学教室
2)九州大学大学院医学研究院眼科学分野
3)琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座
4)東京女子医科大学眼科学講座
5)名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学

近年,滲出型加齢黄斑変性(wAMD)の診療は急速に進歩を遂げ,諸外国および我が国においてきわめて多数のwAMD診療の臨床エビデンスが得られている.本総説では,wAMDの治療に焦点を当て,網膜の診療を専門とする眼科医だけでなく,それ以外の眼科医や,これから網膜の診療に携わる眼科医にも参考となるよう,これまでに得られたwAMD治療の主な臨床エビデンスをまとめ,複数のAMD専門医による解説を加えた.最初に,wAMDの標準的な治療法として認識され,広く臨床応用されている抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の臨床エビデンスについて臨床試験成績だけでなく,実地診療で得られる実臨床データも含めて概説した.また,抗VEGF薬の維持期の投与方法および安全性評価に関する臨床エビデンスも取り上げた.さらに,wAMDの特殊病型として分類されるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy)および網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation),新しい疾患概念として注目されているpachychoroid neovasculopathyの治療に関する臨床エビデンスについても解説した.(日眼会誌124:902-924,2020)

キーワード
滲出型加齢黄斑変性, 臨床エビデンス, 臨床試験成績, 実臨床データ, 抗血管内皮増殖因子薬
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