論文抄録

第124巻第2号

症例報告

母斑切除時の眼瞼皮膚を用いて再建した分離母斑症の1例
河村 真美1)2), 相川 美和1)2), 鹿嶋 友敬1)2)
1)オキュロフェイシャルクリニック東京
2)新前橋かしま眼科形成外科クリニック

背 景:眼瞼分離母斑は胎生期の上下眼瞼が癒合している時期に発生した母斑が,瞼裂形成により上下に二分割された先天性色素性母斑である.瞼縁から皮膚側にかけて広範囲にみられ,整容面での問題や眼瞼機能の障害を来すこともあるため切除を要する.母斑切除の際,皮膚側は切除範囲が広くなることが多く,植皮や局所皮弁での再建を要する.今回,母斑切除時にドッグイヤー予防のために切除した眼瞼皮膚を用いて再建を行った分離母斑の1例について報告する.
症 例:14歳,女性.生下時より右眼瞼耳側に瞼縁から上下眼瞼皮膚側にかけてそれぞれ1×1.2 cm,1×0.8 cm大の分離母斑を認めた.手術は上下眼瞼ともに睫毛根を温存しながら眼瞼縁に沿って母斑を切除した.さらにドッグイヤーの予防のために,皮膚割線に沿って紡錘形に皮膚を切除した.主要な皮膚欠損部には切除した皮膚をトリミングし植皮した.睫毛根を含めた瞼縁部は露出した状態で終了した.術後3か月目,移植した皮膚の生着は良好であり,眼瞼の形状や開閉瞼機能にも影響はみられなかった.
結 論:眼瞼腫瘍切除時の皮膚欠損は遠隔部からの植皮や局所皮弁でも再建できるが,移植片の質感やカラーマッチングは眼瞼皮膚による植皮が最も良好である.分離母斑切除時の眼瞼皮膚による再建は,適用可能な腫瘍径に制限はあるものの整容上も機能上も良好な結果が得られた.(日眼会誌124:70-76,2020)

キーワード
分離母斑, 植皮, 眼瞼皮膚, 質感, カラーマッチング
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