論文抄録

第124巻第8号

症例報告

視神経症を認めたIgG4関連眼疾患の2症例
金原 左京1)2), 坂西 良仁1), 井上 順治3), 井上 賢治2), 海老原 伸行1)
1)順天堂大学医学部附属浦安病院眼科
2)井上眼科病院
3)西葛西・井上眼科病院

背 景:IgG4関連眼疾患は,涙腺腫大,三叉神経腫大,外眼筋腫大を認めるが,視力・視野は保たれることが多い.しかし,視力低下や視野障害を来す「IgG4関連視神経症」を発症することもある.今回,初診時IgG4異常高値(1,000 mg/dL以上)を示した2症例において視神経症を認めたので報告する.
症例1:52歳男性.右眼の視力・視野障害にて受診し,高IgG4血症(1,380 mg/dL),外眼筋腫大・三叉神経腫大を認めたため,IgG4関連眼疾患の疑診群と診断した.プレドニゾロン(PSL)80 mg/日より副腎皮質ステロイド内服漸減療法を開始.現在はPSL 8 mg/日での維持療法を継続中.治療後,両眼の外眼筋腫大・三叉神経腫大は改善したが,右眼の中心暗点は不可逆的に残存した.
症例2:43歳男性.右眼視野異常を自覚して受診,高IgG4血症(1,440 mg/dL),涙腺腫大・三叉神経腫大・眼窩先端部の腫瘤状病変を認めたため,IgG4関連眼疾患の疑診群と診断した.PSL 40 mg/日より副腎皮質ステロイド内服漸減療法を開始.現在はPSL 8 mg/日での維持療法を継続中.治療後,眼窩先端部の腫瘤状病変は縮小し,右眼視野異常も改善した.
結 論:IgG4異常高値(1,000 mg/dL以上)症例ではIgG4関連視神経症を発症し,治療後も不可逆的な視力・視野異常が残存することがあり,早期の診断・治療が必要である.(日眼会誌124:655-665,2020)

キーワード
IgG4関連眼疾患, IgG4関連視神経症, 三叉神経腫大, 涙腺腫大
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