目 的:術後角膜感染症について角膜内皮移植術(DSAEK)と全層角膜移植術(PKP)を比較検討する.
方 法:2007年8月から2018年9月までにバプテスト眼科クリニックで角膜移植術を施行し,1年以上の経過観察が可能であった症例を対象とし,移植後感染症の発症率,起炎菌(ヘルペスなどのウイルス感染を除く),発症時期,発症部位,発症時の局所副腎皮質ステロイド使用状況,予後について後ろ向き観察研究にて比較検討した.
結 果:今回,対象となった症例はDSAEK術後639眼およびPKP術後616眼であった.DSAEK,PKPそれぞれの術後経過観察期間は51.4±20.8か月(平均値±標準偏差),57.3±32.3か月であった.DSAEK,PKPそれぞれの術後角膜感染症は11眼(1.7%),39眼(6.3%)であり,DSAEKのほうがPKPより有意に発症率が低かった(p<0.001).起炎菌はDSAEKでは細菌1眼,真菌8眼,不検出2眼であり,PKPでは細菌11眼,真菌18眼,不検出は10眼であった.術後発症時期はDSAEKでは24.9±25.4か月,PKPでは36.9±34.8か月であった(p=0.23).発症部位についてはDSAEKでは上皮のみの感染は4眼,上皮および実質の感染は5眼,実質のみの感染は2眼であった.PKPでは上皮のみの感染は6眼,上皮および実質の感染は33眼であった.発症時の0.1%フルオロメトロンおよび0.1%ベタメタゾンリン酸エステルナトリウムの局所使用はDSAEKでは4眼,7眼,PKPでは18眼,21眼であった.感染症発症前に比べ保存的加療による治癒後に2段階以上の視力低下を認めた症例はDSAEKで4眼(40.0%),PKPで19眼(51.4%)であった(p=0.39).
結 論:DSAEKはPKPと比較し,術後感染症の発症率は低かった.(日眼会誌125:22-29,2021)