網膜色素変性(RP)の中型動物モデルであるロドプシンP347L遺伝子改変ウサギ(Tg)はRPにおける研究開発に重要な役割を担うと考えられており,その視機能や構造変化を把握することが必要である.今回我々はTgの網膜電図(ERG),経角膜電流刺激により得られる脳波(EEP)を測定することで視機能について評価し,また摘出した眼球・視神経の構造変化を病理組織学的に解析した.ERGの結果から,12か月齢頃までに杆体機能はほぼ消失し,錐体機能も54か月齢頃までに消失すると考えられた.ERGが消失するまでの網膜変性の過程において,Tgでは既報で確認されていた律動様小波・ON型双極細胞成分の増強のみならずOFF型双極細胞成分も増強することが確認された.ERGが消失した高度の網膜変性を伴うTgにおいてもEEPは測定可能であり,視神経機能が残存していると考えられたが刺激開始後最初に出現する陽性波(P1)の振幅は野生型ウサギと比較して有意に低下していた.視神経軸索数についても野生型ウサギと比較してTgで有意に低下していた.ただしP1振幅の減少の度合は視神経軸索数の減弱の度合よりも大きいものであった.人工網膜治療などが検討される場合にはこれらのEEPの変化と視神経軸索数の変化の違いに十分に留意する必要がある.(日眼会誌125:1003-1012,2021)