論文抄録

第125巻第4号

臨床研究

Visual snow syndromeの日本人21例の検討
光畑 みずほ1), 若倉 雅登1), 岩佐 真弓1), 山上 明子1), 井上 賢治1), 鈴木 幸久2)3), 石井 賢二3)
1)井上眼科病院
2)地域医療機能推進機構三島総合病院眼科
3)健康長寿医療センター研究所神経画像研究チーム

目 的:我々は2005年ごろから視野に常時無数の小雪が降る,砂嵐が出現するなどの両眼性視覚陽性現象をもつ症例を蓄積していた.近年,類似例がvisual snow syndrome(VSS)と報告されているので,我々の症例と比較検討する.
対象と方法:井上眼科病院神経眼科外来で,VSSに相当すると判断された21例につき,性別,受診年齢,発症年齢,自覚症状,患者背景,眼科所見,経過,治療内容,緩解および増悪の因子,転帰について後ろ向きに調べ,Schankinらの診断基準と比較した.また,一部の症例で18F-フルオロデオキシグルコースポジトロン断層法(FDG-PET)の結果を検討した.
結 果:対象症例は男性9例,女性12例,発症時の年齢は27.3±13.2歳(平均値±標準偏差)であった.全視野に常時無数の小さな点が出現する状態(visual snow)以外の自覚症状として,視覚保続は聴取した20例中17例(85.0%),内視現象の増悪は12例中12例(100%),羞明は11例中9例(81.8%)に認めた.片頭痛の既往は21例中12例(57.1%),家族歴を含めると21例中18例(85.7%)あった.Schankinらの提唱した診断基準とは21例中17例(81.0%)で完全に一致した.FDG-PET検査では6例中4例(66.7%)に視覚関連領域の糖代謝の低下を認めた.
結 論:今回の日本人例は海外で報告されているVSSとほぼ同じ臨床的特徴があった.日常生活に影響する視覚現象だが,眼科医の認識は乏しく,心因性などとされやすい.VSSはまれでない症候群として認識を高めるべきである.(日眼会誌125:438-445,2021)

キーワード
visual snow症候群, 小雪, 片頭痛, 持続歴視覚陽性現象, 18F-フルオロデオキシグルコースポジトロン断層法
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