目 的:角膜穿孔に対するシアノアクリレートによる角膜穿孔閉鎖術の有効性と安全性を検討すること.
対象と方法:2018年1月~2020年5月に宮田眼科病院において保存的治療で閉鎖しなかった角膜穿孔に対してシアノアクリレートによる角膜穿孔閉鎖術を行った連続症例を対象とした.患者背景,角膜穿孔の原因,穿孔創の大きさ,治療前と治療後1,3,6,12か月における穿孔部の角膜厚,矯正視力,合併症を診療録から後ろ向きに検討した.
結 果:10例10眼〔年齢62.7±22.7歳(平均値±標準偏差)〕が対象となった.細菌性角膜炎が2眼,遷延性角膜上皮欠損が2眼,外傷が2眼,関節リウマチに伴う辺縁性角膜潰瘍が1眼,移植片対宿主病(GVHD)に伴うドライアイが1眼,鼻涙管閉塞症が1眼,原因不明が1眼であった.穿孔創の大きさは0.74±0.55:0.2~2.0 mm(平均値±標準偏差:範囲)と比較的小さかった.10眼中8眼は穿孔創の閉鎖を得られたが,2眼は創閉鎖せず,それぞれ全層角膜移植術と眼球摘出術を行った.3眼において複数回のシアノアクリレートによる角膜穿孔閉鎖術を要し,3眼で角膜への血管侵入を認めた.シアノアクリレートによる角膜穿孔閉鎖術後に穿孔創が閉鎖した症例はすべて穿孔部の角膜厚が増加し,治療前と比較して術後1,3,6,12か月の値は統計学的に有意に増加していた.
結 論:シアノアクリレートによる角膜穿孔閉鎖術は小さな角膜穿孔の治療において有効であると考えられた.(日眼会誌125:579-585,2021)