論文抄録

第125巻第6号

臨床研究

親水性および疎水性アクリル製眼内レンズにおけるフェムトセカンドレーザーを用いた前囊切開窓の経時的変化
谷口 紗織, 平沢 学, 太田 友香, 大木 伸一, 片山 みちる, 舟木 若奈, 南 慶一郎, ビッセン宮島 弘子
東京歯科大学水道橋病院眼科

目 的:フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術(FLACS)における前囊切開窓の経時的変化を親水性および疎水性アクリル製眼内レンズ(IOL)で後ろ向きに比較した.
対象と方法:対象はLenSx(アルコン)でFLACSを行い,親水性アクリル製IOLのPODFT(PhysIOL)を挿入した親水群36例36眼と,疎水性アクリル製IOLのZMB00/ZLB00(ジョンソンエンドジョンソン)を挿入した疎水群26例26眼である.術後1週,1か月,6か月に撮影した散瞳後徹照像から回折格子第一ゾーンの径をもとに切開窓面積を求め,術後1週の値を基準として術後1か月,6か月の前囊切開窓の収縮率(前囊収縮率)を算出した.
結 果:前囊収縮率は術後1か月において親水群,疎水群で7.9±17.3%(平均値±標準偏差),0.01±6.3%,術後6か月において7.0±18.6%,3.6±10.2%と術後1か月のみ親水群で有意に高かった(p=0.02).各群とも術後1か月と術後6か月の間で前囊収縮率に有意な変化は認めなかった.術後6か月時に20%以上の前囊収縮率を認めた割合は親水群で25.0%,疎水群で0.0%と,親水群のほうが有意に多かった(p=0.03).
結 論:親水性アクリル製IOLではFLACS後の前囊切開窓の顕著な収縮が起こりやすく,IOLの光学部素材の違いやFLACSによる影響が関与すると考えられた.(日眼会誌125:586-590,2021)

キーワード
親水性アクリル製眼内レンズ, 疎水性アクリル製眼内レンズ, フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術, 前囊収縮
別刷請求先
〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-9-18 東京歯科大学水道橋病院眼科 谷口 紗織