論文抄録

第125巻第6号

症例報告

髄液うっ滞による視神経症に対して視神経鞘開窓術を行った1例
藤田 恭史, 三村 真士, 佐藤 陽平, 戸成 匡宏, 廣川 貴久, 松尾 純子, 奥 英弘, 菅澤 淳, 池田 恒彦
大阪医科薬科大学眼科学教室

背 景:視神経鞘内髄液圧の上昇により視神経障害を起こすことがある.今回我々は,頭蓋底―視神経鞘髄膜腫に起因したと考えられる髄液うっ滞による視神経症に対し,視神経鞘開窓術を行った症例を報告する.
症 例:54歳男性.3年前からの左眼視力低下のため当科を初診した.左矯正視力0.2,左中心フリッカ値(CFF)10 Hz,動的視野検査にて左眼中心暗点,左眼視神経乳頭周囲の耳側に脈絡膜皺襞を認めた.造影磁気共鳴画像法(MRI)検査にて視交叉近傍で左視神経鞘に造影効果のある約3.5 mm大の占拠性病変および左視神経鞘内の髄液うっ滞を認めた.視神経鞘髄膜腫疑いとして当院脳神経外科に紹介受診するも,手術適応がないとのことで経過観察となった.約1年後,左矯正視力0.1以下,左CFFが測定不能となるまで悪化したため,当科眼形成再建外科外来を初診し,視神経鞘内の減圧を目的に左視神経鞘開窓術を行った.全身麻酔下に経重瞼切開で眼窩内に入り,左視神経鞘に約2 mm大の開窓を施して髄液圧を減圧した結果,左眼脈絡膜皺襞は改善し,左矯正視力0.25,左CFF 15 Hzまで回復した.また視神経乳頭部の血流変化を示すレーザースペックル血流画像化法において,mean blur rateも10.0から22.5まで改善した.
結 論:視神経鞘髄膜腫などに起因した視神経鞘内髄液圧の上昇により視神経症を来すことがある.その場合には視神経鞘開窓術が有効である.(日眼会誌125:596-603,2021)

キーワード
視神経鞘髄膜腫, 髄液うっ滞, 視神経症, 視神経鞘開窓術
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