目 的:過去に我々は1998年4月より10年間に京都府立医科大学附属病院眼科(以下,当科)で施行した羊膜移植の手術成績を報告した.今回,その後の経過も含む21年と3か月間の推移を振り返り,羊膜移植が臨床研究から保険収載に至るまでの推移,羊膜移植の効果と適応を考察する.
対象と方法:1998年4月~2019年6月の期間に当科で羊膜移植を施行した症例の疾患を年度ごとに集計し,手術件数と対象疾患の内訳を臨床研究・先進医療・保険収載の3カテゴリーに分けて検討した.また,再手術に至った疾患を集計し再手術率を比較検討した.
結 果:21年3か月の期間に594例664眼に対して750件の羊膜移植が行われた.羊膜移植の手術件数は臨床研究が開始された1998年から増加するも,2009年~2013年の先進医療の時期には減少し,2014年の保険収載後に再度増加傾向を示した.対象となった疾患は翼状片が最も多く,難治性眼表面疾患(Stevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡,熱・化学外傷,移植片対宿主病,特発性角膜上皮症),腫瘍性疾患の順に続いた.また難治性緑内障や結膜弛緩症は,当初10年での施行であった.2回以上の再手術を行った症例は羊膜移植全体の7.7%で,難治性眼表面疾患,腫瘍性疾患,翼状片の順であった.
結 論:羊膜移植は臨床研究・先進医療を経て保険収載での一般医療となった.適応疾患は翼状片が最多で,次いで難治性眼表面疾患であった.羊膜移植は安定した手術成績を示したが,一部の難治性眼表面疾患の症例ではその限界もみられた.(日眼会誌125:895-901,2021)