背 景:Werner症候群は思春期以降に発症し,白髪や禿頭といった毛髪変化・皮膚の萎縮や硬化などの老化徴候が早期に生じる早老症の代表的な疾患である.合併症として両眼白内障がよく知られているが,網膜変化の報告はほとんどない.今回,光干渉断層計(OCT)で乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚と網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の菲薄化を認め,Humphrey視野検査で緑内障と診断したWerner症候群の2例を経験したので報告する.
症例①:44歳男性.初診時矯正視力は左右ともに1.2であり,前眼部は両眼が眼内レンズ挿入眼,眼底所見として両眼の視神経乳頭陥凹拡大がみられた.cpRNFL厚,GCC厚の下方の菲薄化を認めた.Humphrey視野検査で左眼は弓状暗点を示し,緑内障を認めた.
症例②:62歳女性.初診時矯正視力は右1.0,左0.5であり,前眼部は両眼が眼内レンズ挿入眼,眼底所見として両眼に視神経乳頭陥凹拡大がみられた.cpRNFL厚,GCC厚の菲薄化を認めた.Humphrey視野検査で右眼は上方優位に視野欠損を示し,緑内障を認めた.
結 論:Werner症候群に緑内障を合併した2例を報告した.原因不明の若年白内障を認めWerner症候群を疑う際には,前眼部検査による若年白内障の確認だけではなく,緑内障の合併をOCTや視野検査で確認していく必要があると考えられる.(日眼会誌126:36-42,2022)