加齢黄斑変性(AMD)は未だ発症機序が不明な点も多いが,遺伝的要因と臨床所見および治療反応性との関連を調査することにより,発症機序の解明や治療効果の判定予測,また新たな治療の発見に結びつく可能性がある.AMDの全ゲノム解析により,これまでage-relatedma culopathy susceptibility 2(ARMS2),complement factor H(CFH),complement component 2(C2)-complement factor B(CFB)-superkiller viralicidic activity 2-like(SKIV2L)およびC3がAMDに関連していると報告されている.現在,滲出型AMDの治療において,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射が第一選択療法になっており,治療薬に関しては,2008年のペガプタニブナトリウムの承認以来,ラニビズマブ,アフリベルセプト,ブロルシズマブと選択肢が増えてきている.滲出型AMDの治療と遺伝的要因の関連について,これまでラニビズマブと治療反応性に関する報告が散見されたが,アフリベルセプト治療と遺伝的背景を調べた報告はなかった.そこで,アフリベルセプトを用いて導入期治療後pro re nata投与を行い,治療後1年における治療反応性と感受性遺伝子の関連を調べた.再治療の必要性および追加注射の回数は,ARMS2 A69S(rs10490924)のT alleleおよびCFH(rs1329428)のC alleleと関連していた.本研究から,患者のAMD感受性遺伝子を調べることにより,治療レジメンの選択,診療間隔の決定などを症例にあわせて調整する,いわゆるprecision medicineを発展させることができる可能性がある.(日眼会誌126:968-975,2022)