論文抄録

第126巻第11号

臨床研究

眼窩下壁骨折における骨折部の病理学的観察
嶌嵜 創平1), 三浦 咲子2), 恩田 秀寿1)
1)昭和大学医学部眼科学講座
2)昭和大学医学部臨床病理診断学講座

目 的:眼窩下壁骨折では,骨折部での出血・炎症反応により眼窩脂肪と周辺組織が癒着することで不可逆性の眼球運動障害が生じる.我々は眼窩下壁骨折患者から採取した骨折部の癒着組織を病理組織学的に観察し,創傷治癒過程を考察した.これにより病理組織学的側面から適切な手術時期を検討したので報告する.
対象と方法:対象は昭和大学病院附属東病院で2018~2020年に手術を施行した眼窩下壁骨折の7症例であり,手術中に骨折部に嵌頓していた組織を剝離し,病理検査を行った.病理組織はヘマトキシリン・エオジン染色を行い,所見を病理専門医とともに評価した.
結 果:受傷後の日数が経過するに従い炎症反応は次第に減少し,それに比例して嵌頓した眼窩脂肪と上顎洞粘膜の癒着は徐々に進行していたことから,約3か月かけて瘢痕化に至ることが示唆された.
結 論:眼窩下壁骨折を病理組織学的に評価することで,適切な手術時期を検討した.受傷早期に眼球運動障害がない場合でも,癒着や瘢痕形成の前に手術を施行することが望ましい.(日眼会誌126:976-982,2022)

キーワード
眼窩下壁骨折, 眼球運動障害, 病理検査, 癒着, 瘢痕形成
別刷請求先
〒142-0054 東京都品川区西中延2-14-19 昭和大学医学部眼科学講座 嶌嵜 創平