論文抄録

第126巻第12号

臨床研究

小児における斜視手術後副腎皮質ステロイド点眼による眼圧への影響
大岩 未来, 鈴木 由美, 富田 茜, 満川 忠宏, 北 善幸, 山田 昌和
杏林大学医学部眼科学教室

目 的:斜視手術後の副腎皮質ステロイド点眼による眼圧への影響を16歳未満の小児と16歳以上に分け,前向き観察研究で比較・検討した.
対象と方法:対象は,2020年1~12月に当科で斜視手術を行った16歳未満の小児群24例〔9.3±3.3歳(平均値±標準偏差)〕と16歳以上群22例(45.4±20.1歳)である.さらに小児群を9歳未満群13例13眼(6.8±1.0歳)と9歳以上群11例11眼(12.3±2.3歳)に分けて検討した.全症例に術翌日~7日の間0.1%ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液を1日4回点眼し,術後8日目から0.1%フルオロメトロン点眼液を1日4回に変更し,術後1か月まで点眼を継続した.術眼の眼圧についてはiCare-Pro Rebound Tonometer(エムイーテクニカ)(以下,アイケアPRO手持ち眼圧計)を用いて,術前,術後1週および術後1か月に測定した.
結 果:術前,術後1週および術後1か月の眼圧(mmHg)は,9歳未満群はそれぞれ15.7±2.4,20.7±5.4,16.6±3.4,9歳以上群はそれぞれ16.7±2.2,16.9±3.7,17.2±3.4,16歳以上群はそれぞれ15.1±3.3,15.7±2.1,14.2±2.2であり,9歳未満群において術後1週の眼圧が有意に高値となった(p<0.01,Friedman検定post hoc:Shaffer).また,術後1週の眼圧上昇幅が6~15 mmHgの例が,9歳未満群,9歳以上群および16歳以上群でそれぞれ4例,0例,1例であり,9歳未満群のうちの1例が16 mmHg以上の上昇を示した.
結 論:斜視手術後の副腎皮質ステロイド点眼によって,小児,特に9歳未満ではステロイド高眼圧症を生じる可能性があり,眼圧の推移に注意を払い,慎重な投与を要すると考えられた.また,小児の眼圧管理にアイケアPRO手持ち眼圧計が簡便かつ有用であった.(日眼会誌126:1039-1045,2022)

キーワード
副腎皮質ステロイド点眼液, ステロイド緑内障, 小児緑内障, iCare-Pro Rebound Tonometer
別刷請求先
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