論文抄録

第126巻第12号

臨床研究

前眼部光干渉断層血管撮影を用いた白内障手術前後における切開創周囲血管密度の評価
甘利 達明, 江口 秀一郎, 鬼柳 裕介
江口眼科病院

目 的:前眼部光干渉断層血管撮影(AS-OCTA)を用いて白内障術後の切開創周囲の血管密度変化を評価する.
対象と方法:強角膜一面切開にて白内障手術を行った患者のうち,術後にAS-OCTA(PLEX Elite 9000,Carl Zeiss Meditec)で撮像できた10例10眼を対象とした.年齢は72.8±6.8歳(平均値±標準偏差)であり, 手術前日・術後1日・3日・5日・7日・14日・21日・1か月・3か月に結膜上方の強角膜切開創周囲をOCTA 6×6 mmおよび3×3 mmプログラムにて撮像した.画像は全層測定結果(whole eye),結膜―強膜浅層を反映する結膜表面0~200 μmのsuperficial layer,強膜を反映する結膜表面200~1,000 μmのdeep layerの3群に分け,ImageJ(National Institute of Health)を用いて各群での血管密度の評価を行った.
結 果:6×6 mmプログラムにおいて,whole eyeでは術前と比較し術後1日・3日・5日・7日・14日・21日目で血管密度の有意な増加を認め(p<0.01),その増加率は術後3日目で約45%程度であった.Superficial layerはいずれの測定日でも血管密度の有意な変化を認めなかった.Deep layerは術前と比較し術後1日・3日・5日目で血管密度の有意な増加を認め(p<0.01),その増加率は術後3日目で約90%であった.画像読影では,術後14日目以降に創部辺縁血管の架橋構造が認められ,角膜辺縁血管係蹄網の形成または再疎通が術後5日目より開始されていることが示唆された.
結 論:AS-OCTAを用いて白内障手術前後の切開創近傍の血管走行およびOCTA測定野の血管密度の変化を経時的かつ層別に観察することができた.白内障術後の創口部近傍の血管再構築過程は層別に異なる経過を示した.AS-OCTAによって白内障術後切開創近傍の血管走行および血管密度を評価することが可能であった.(日眼会誌126:1046-1056,2022)

キーワード
前眼部光干渉断層血管撮影(AS-OCTA), 白内障, 光干渉断層血管撮影(OCTA), 血管密度
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