論文抄録

第126巻第5号

臨床研究

上輪部角結膜炎に対する治療の検討
喜多 遼太, 横井 則彦, 加藤 弘明, 小室 青, 薗村 有紀子, 外園 千恵
京都府立医科大学眼科学教室

目 的:上輪部角結膜炎(SLK)の治療として,点眼治療,涙点閉鎖治療,結膜に対する外科治療などが報告されている.そこで,京都府立医科大学附属病院(以下,当院)眼科ドライアイ外来におけるSLKの治療の現状についてレトロスペクティブに検討した.
対象と方法:当院眼科ドライアイ外来において,2008年6月~2019年5月に受診したSLKの77例77眼(平均年齢58.0歳)を対象とし,点眼治療の効果,涙点閉鎖治療(点眼治療が奏効しない場合)の効果,結膜に対する外科治療(点眼治療,涙点閉鎖治療が奏効しない場合)の効果,Sjögren症候群や甲状腺疾患,ドライアイの合併および眼瞼下垂手術の既往の有無について検討した.
結 果:点眼治療,涙点閉鎖治療,結膜に対する外科治療では,それぞれ77例中24例(31.2%),35例中27例(77.1%),26例全例(100%)で改善がみられ,改善に要した期間はそれぞれ6.2±5.9か月(平均値±標準偏差),2.8±1.6か月,2.4±1.0か月であった.また,Sjögren症候群は77例中15例(19.5%)で合併し,甲状腺疾患は甲状腺関連ホルモンや甲状腺関連自己抗体を検索した31例中10例(32.3%)で合併していた.眼瞼下垂手術の既往は77例中14例(18.2%)で認められ,ドライアイは77例中60例(77.9%)で合併していた.
結 論:SLKに対する治療として,点眼治療では効果に限界があり,涙液減少型ドライアイの合併例には涙点閉鎖治療も奏効するが,結膜に対する外科治療が最も効果的であることが示された.(日眼会誌126:517-524,2022)

キーワード
上輪部角結膜炎(SLK), ドライアイ, 点眼治療, 涙点閉鎖治療, 外科治療
別刷請求先
〒602-0841 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学眼科学教室 横井 則彦
nyokoi@koto.kpu-m.ac.jp