目 的:超広角走査レーザー検眼鏡は,無散瞳下で画角200°の広範囲の眼底を観察可能な機器であるが,その眼底画像の周辺部は中心部に比べて暗いという弱点がある.そこで画像鮮明化処理ソフトウェアであるfundus enhancer(ロジック・アンド・デザイン)による鮮明化処理前後の画像を比較し,その有用性を検討した.
対象と方法:京都府立医科大学附属病院眼科外来で撮像された周辺部網膜裂孔,増殖糖尿病網膜症,眼サルコイドーシス,網膜色素変性などの眼底画像に対し鮮明化処理を行った.次に,鮮明化処理前後の画像をランダムに表示し,臨床経験の浅い眼科医8人に読影させ,5秒間に取得できた異常所見の個数をそれぞれ数え,比較検討した.
結 果:画像鮮明化処理により網膜周辺部が鮮明化され,網膜裂孔や感染病巣が明瞭になった.網膜血管は周辺部まで明瞭となり,血管炎の範囲や硝子体混濁が鮮明化された.総数23か所の異常所見に対し,鮮明化処理前画像で取得できた個数は10.0±1.6か所(平均値±標準偏差),処理後画像では15.0±1.2か所であり,処理前画像と比較して,処理後画像で有意に多くの異常所見を取得できた(p=0.016).その一方で,正常網膜も細かく鮮明化されるため,鮮明化処理後画像において異常ではない所見を異常所見と判断した例が4か所あった.
結 論:超広角走査レーザー検眼鏡で撮像した眼底画像に対する画像鮮明化処理は眼底疾患の診断の一助となる可能性がある.(日眼会誌126:574-580,2022)