背 景:毛様体解離もしくは毛様体剝離による低眼圧は外傷や医原性に生じることが知られている.過去の報告では20ゲージおよび25ゲージシステムを用いた硝子体手術後に毛様体剝離を生じた報告はあるが,27ゲージシステムを用いた硝子体手術後に毛様体剝離を生じた報告はない.
症 例:76歳,女性.左眼視力の低下で当院を紹介受診した.初診時矯正視力は左20 cm手動弁,眼圧は左13 mmHgであり,左眼に硝子体出血を認めた.27ゲージシステムを用いて経毛様体扁平部硝子体切除術(PPV)を施行した.術中所見では静脈の拡張蛇行と全象限にわたる広範な網膜出血を認め,網膜中心静脈閉塞症による硝子体出血と診断した.術翌日にわずかな硝子体出血と黄斑浮腫を認めたため,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射を施行した.術後3週に硝子体出血の増悪と低眼圧(4 mmHg)を認めた.超音波検査では網膜剝離や脈絡膜剝離の所見は認めず,前眼部光干渉断層計を用いて毛様体を撮影したところ,4象限に毛様体剝離を認めたため,27ゲージシステムを用いたPPVと20%六フッ化硫黄ガスによる硝子体置換術を行った.仰臥位を指示し,術後速やかに毛様体剝離は消失したが,退院後に体位制限を解除したところ低眼圧と毛様体剝離が再発した.仰臥位を再度指示し,毛様体剝離の消失と眼圧の上昇が得られた.
結 論:27ゲージシステムを用いた硝子体手術後に生じた毛様体剝離の1例を報告した.低侵襲硝子体手術後における遷延性低眼圧でも毛様体剝離の可能性を考慮する必要がある.(日眼会誌126:581-587,2022)