論文抄録

第126巻第7号

臨床研究

ブロルシズマブ関連眼内炎症の検出と定量評価におけるレーザーフレアメーターの有用性
松本 英孝, 中村 考介, 星野 順紀, 向井 亮, 秋山 英雄
群馬大学大学院医学系研究科眼科学

目 的:ブロルシズマブ関連眼内炎症の検出と定量評価におけるレーザーフレアメーターの有用性を評価すること.
対象と方法:2020年10月~2021年3月に群馬大学医学部附属病院眼科を受診し,ブロルシズマブ硝子体内注射で治療を行った滲出型加齢黄斑変性45例48眼〔男性32例34眼,女性13例14眼,年齢74.5±8.4歳(平均値±標準偏差)〕を対象とした.治療歴のない37例40眼に対しては,導入期治療後にtreat-and-extend(TAE)で治療を行った.また,アフリベルセプトからの切り替え8例8眼に対しては,導入期治療なしでTAEとした.経過中に虹彩炎,硝子体炎,網膜血管炎などの眼内炎症が確認された場合は,トリアムシノロンアセトニド後部Tenon囊下注射とベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼で治療を行った.受診時には毎回,レーザーフレアメーター(FM-600,コーワ)を用いて前房フレア値を測定した.
結 果:ブロルシズマブ関連眼内炎症は6眼で確認された.眼内炎症がみられなかった42眼の前房フレア値の平均はどの時点においても10 photon count/msec(pc/ms)未満であった.一方,眼内炎症がみられた6眼の前房フレア値は,発症前7.3±1.1,発症時15.3±8.2,10週後8.1±2.9 pc/msと発症時に上昇し,副腎皮質ステロイド治療で改善した.しかし,虹彩炎がみられなかった2眼では発症時に前房フレア値の上昇はみられなかった.
結 論:ブロルシズマブ硝子体内注射後の前房内炎症をレーザーフレアメーターによって定量的に評価することができた.しかし,ブロルシズマブ関連眼内炎症の発症予測は困難であった.(日眼会誌126:636-641,2022)

キーワード
ブロルシズマブ, 眼内炎症, レーザーフレアメーター, 滲出型加齢黄斑変性
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