論文抄録

第126巻第8号

臨床研究

強膜病変を合併した抗好中球細胞質抗体関連血管炎12眼の検討
奥村 峻大1)2), 福岡 秀記1), 岩間 亜矢子1), 吉川 大和1)2), 田尻 健介2), 喜田 照代2), 外園 千恵1)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)大阪医科薬科大学眼科学教室

目 的:抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎は全身性の壊死性血管炎であり,高いANCA陽性率を特徴とし,難病に指定されている.その眼合併症は強膜炎が最も多く,そのほか眼窩病変,ぶどう膜病変などを合併し,難治性である.今回,強膜病変を合併したANCA陽性患者について検討した.
対象と方法:2009~2019年に京都府立医科大学附属病院眼科を受診した症例で,ANCA陽性でかつ強膜病変を有する患者10例12眼〔男性3例,女性7例,76.8±9.4:58~88歳(平均値±標準偏差:範囲)〕を対象に,矯正視力,治療内容,眼合併症の詳細について後ろ向きに検討した.
結 果:強膜炎合併症例は12眼中11眼(92%)でみられ,残りの1眼(8%)では強膜炎を認めないものの強膜が菲薄化していた.眼窩病変合併は2眼(17%),ぶどう膜炎合併は4眼(33%)でみられた.強膜炎合併症例のうち両眼性は2例(20%)であった.矯正視力は初診時0.13±0.21,最終受診時0.55±0.96であった(p=0.168).全例で局所に副腎皮質ステロイド点眼薬が処方されており,9例(90%)で副腎皮質ステロイド内服薬もしくは免疫抑制内服薬が処方されていた.経過を追うことのできた10眼中3眼に矯正視力の低下を認め,そのすべてでぶどう膜炎を合併していた.
結 論:ANCA関連血管炎では強膜炎を高率で合併するが,特にぶどう膜炎を併発する症例では,視力低下に注意を要する.(日眼会誌126:697-702,2022)

キーワード
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎, 強膜炎, ぶどう膜炎, 強膜菲薄化
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