論文抄録

第126巻第9号

臨床研究

診療報酬レセプトデータに見る春季カタルの治療実態の推移:2011~2018
川崎 良1)2), 相馬 剛至3), 大家 義則3), 西田 幸二2)3)
1)大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学
2)大阪大学医学部附属病院AI医療センター
3)大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)

目 的:診療報酬レセプトデータベースを用いて実臨床における春季カタル(VKC)の処方実態を時系列で評価する.
対象と方法:健康保険組合加入者の診療報酬レセプトデータベース(2011~2018年)を年次および前期(2011~2014年)と後期(2015~2018年)に分け比較した.VKCは,標準病名に「VKC」を含む30歳以下と定義した.抗アレルギー点眼薬,副腎皮質ステロイド点眼薬(以下,ステロイド点眼薬),免疫抑制点眼薬とその組み合わせの割合を時系列で比較し,検討した.
結 果:抽出されたVKC患者は男性63.6%であり,年齢は11:8~17歳(中央値:四分位範囲)であった.初回治療選択は前期では抗アレルギー点眼薬+ステロイド点眼薬が最も多く(20.3%),次いで抗アレルギー点眼薬+ステロイド点眼薬+免疫抑制点眼薬(17.4%),抗アレルギー点眼薬+免疫抑制点眼薬(15.4%)の順であった. 後期では,抗アレルギー点眼薬+免疫抑制点眼薬が最も多く(21.3%),次いで抗アレルギー点眼薬+ステロイド点眼薬+免疫抑制点眼薬,抗アレルギー点眼薬+ステロイド点眼薬であった(それぞれ16.6%).前期と後期の比較では,抗アレルギー点眼薬+免疫抑制点眼薬が有意に増加し(p<0.001),抗アレルギー点眼薬+ステロイド点眼薬が有意に減少していた(p=0.006).
結 論:診療報酬レセプトデータベースにおける処方実態において,VKCの治療選択が,診療ガイドラインが発表されて時間とともに標準推奨治療である抗アレルギー点眼薬と免疫抑制点眼薬の併用に移行していた.(日眼会誌126:743-750,2022)

キーワード
春季カタル, 診療報酬レセプトデータベース, 処方実態, 時系列
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