論文抄録

第127巻第1号

症例報告

遺伝性先天白内障3家系3世代における手術のタイミングと良好な視力予後との関係
矢ヶ﨑 悌司1)2), 横山 吉美2), 市川 一夫2)3), 加賀 達志2), 山本 真菜2)
1)眼科やがさき医院
2)独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院眼科
3)中京眼科

目 的:高度の水晶体混濁を示す先天白内障において良好な視力予後を得るためには,両眼性で生後3か月,片眼性で生後6週以内の手術の施行が不可欠である.そのため遺伝性先天白内障の患者が子どもを授かればすぐに受診するよう指導している.それによって適切な時期に手術を行い,良好な視力予後を得た3症例について報告する.
症 例:症例 ①:3歳9か月,男児.生後8日目に初診した.生後8週目に両眼白内障手術を行い,術後7日目よりハードコンタクトレンズ(HCL)にて屈折矯正を開始した.1歳11か月時に眼内レンズ(IOL)挿入術を行い,現在の矯正視力は両眼ともに0.8である.症例 ②:9歳,女児.生後16日目に初診した.生後8週目に両眼白内障手術を行い,術後10日目よりHCLにて屈折矯正を開始した.2歳7か月時にIOL挿入術を行い,現在の矯正視力は両眼ともに1.2である.症例 ③:18歳,女性.生後8日目に初診した.生後8週目に左眼の白内障手術を行い,術後9日目よりHCLにて屈折矯正を開始した.覚醒時間の最大50%の遮閉治療も併用した.2歳3か月時に左眼のIOL挿入術を行い,現在の矯正視力は左1.0と良好である.3例ともに祖父および親の一方が先天白内障手術を受けているが,視力は指数弁~0.6と視力予後が良好ではない.
結 論:遺伝性先天白内障の患者に対し家族指導を行ってきたため,患児は生後早期に受診することができた.この指導により,視力予後の臨界期以内に白内障手術を行うことが可能となる.(日眼会誌127:32-37,2023)

キーワード
先天白内障, 遺伝性, 形態覚遮断弱視, 臨界期, 早期手術
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