論文抄録

第127巻第1号

臨床研究

学会原著
第126回日眼総会
結膜悪性黒色腫の臨床像と治療の現状
後藤 浩1), 山川 直之1), 坪田 欣也1), 馬詰 和比古1), 臼井 嘉彦1), 森 秀樹1), 松村 一2)
1)東京医科大学臨床医学系眼科学分野
2)東京医科大学臨床医学系形成外科学分野

目 的:結膜悪性黒色腫の臨床像,治療の現状,予後を明らかにすること.
対象と方法:東京医科大学病院(以下,当院)眼科で結膜悪性黒色腫と診断された50例の患者背景および臨床像と,当院で治療を行った45例の治療法と経過,予後について,診療録をもとに後ろ向きに調査した.
結 果:診断確定時の年齢は65.7±15.1:37~96歳(平均値±標準偏差:範囲),性別は男性19例,女性31例,罹患眼は右23例,左27例で,全例が日本人症例であった.悪性腫瘍臨床国際分類(TNM分類)ではT1が14例(28%),T2が26例(52%),T3が10例(20%)であり,一部の評価不能例を除き初診時は全例がN0およびM0であった.結膜メラノーシスは42例(84%),母斑は9例(18%)で確認された.当院で治療が行われた45例中,初回から眼窩内容除去術が施行されたのは5例(11%)で,40例(89%)は腫瘍の切除と眼表面の再建とともに,適宜,冷凍凝固と局所化学療法などによる眼球温存療法が行われた.経過観察期間は51.4±40.2:12~159か月で,全45例中13例(29%)で局所再発を来し,そのうち2例に眼窩内容除去術が行われた.初回治療施行後の再発率は1年後で8.9%,3年後で19.3%,5年後で35.6%であった.45例中7例(16%)にリンパ節転移もしくは遠隔転移がみられた.
結 論:日本人症例における結膜悪性黒色腫の臨床像を明らかにした.初回治療として約9割の症例に眼球温存療法が行われ,3割に局所再発がみられたが,最終的に8割以上の症例で眼球を温存することができた.予後に関わる要因については経過観察期間を延長したうえで,さらに検討していく必要がある.(日眼会誌127:7-18,2023)

キーワード
結膜悪性黒色腫, 眼球温存療法, 眼窩内容除去術, 再発, 再発
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〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学臨床医学系眼科学分野 後藤 浩
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