目　的：低加入度数分節型眼内レンズ（IOL）のラインナップにトーリックモデルが追加されたが，まれに術後大回旋することが知られている．そこで，トーリックモデルと同じ形状である通常の低加入度数分節型IOLが挿入された症例における術後回旋角度について，水平方向固定と垂直方向固定で比較検討した．
対象と方法：囊内固定された低加入度数分節型IOL（LS-313 MF15，参天製薬）挿入眼のうち，水平方向に固定された55例84眼（H群）と垂直方向に固定された47例84眼（V群）を対象とした．手術動画からキャプチャーした手術終了時の静止画像と，術後3日以上経過した時点での散瞳後前眼部写真を重ね合わせ，術終了時からの囊内回旋角度を計測して2群間で比較した．
結　果：角膜屈折力はH群で44.0±1.6 D（平均値±標準偏差），V群で44.1±1.9 D，眼軸長は23.6±1.1 mm，24.0±1.5 mm，IOL度数は19.3±2.9 D，18.3±3.7 D，前房深度は3.4±2.3 mm，3.1±0.4 mm，角膜径は11.5±0.8 mm，11.5±0.8 mm，水晶体中心厚は4.6±0.6 mm，4.8±2.0 mm，水晶体囊径は10.3±0.2 mm，10.3±0.2 mm，連続円形切囊面積は27.1±3.8 mm²，27.4±3.2 mm²で，いずれも2群間で有意差を認めなかった．術後回旋角度はH群で7.9±15.4°，V群で4.4±4.8°と，有意差はなかったが，20°以上の回旋はH群で7眼，V群で0眼であり，H群で有意に多かった（p=0.0137，Fisher exact test）．
結　論：低加入度数分節型IOLの術後回旋角度は水平および垂直方向固定で有意差はなかったが，水平方向に固定した場合に大回旋する頻度が高かった．（日眼会誌127：844-849，2023）