論文抄録

第127巻第11号

総説

令和4年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説
正常若年日本人における角膜内皮細胞の密度と形態
小野 喬1)2)
1)東京大学大学院医学系研究科眼科学教室
2)宮田眼科病院

正常な日本人の角膜内皮の細胞密度と形態について,これまで40歳以上のデータは報告されてきたが,若年者における正常値は定量化されていなかった.著者らは,屈折異常以外に眼科疾患を有さない16,842眼8,421人〔19.6±8.7歳(平均値±標準偏差)〕を対象とした後ろ向き観察研究を行い,正常人における角膜内皮細胞密度,細胞面積の変動係数(CV),六角細胞出現率(6A),細胞面積の正常値を検討した.1~10,11~20,21~30,31~40,41~50,51~60,61~70歳の各年齢層における角膜内皮細胞密度はそれぞれ3,314.5±334.5,3,160.3±284.5,3,027.6±287.0,2,874.2±283.8,2,814.4±298.4,2,734.5±273.5,2,740.0±289.5 cells/mm2であり,加齢とともに有意に減少した.角膜内皮細胞密度の減少率は0.42%/年となり,諸外国の既報と合致する結果であった.多変量解析では,年齢と性別が角膜内皮細胞密度,CV,6A,細胞面積と有意に相関した.21歳未満の患者における角膜内皮細胞密度の年間減少量は,21歳以上の患者よりも有意に高いことから,角膜内皮障害のリスクを評価するため,若年者でも定期的に角膜内皮をモニタリングすることが重要であると考えられた.(日眼会誌127:1015-1021,2023)

キーワード
角膜内皮細胞, 正常値, 角膜内皮障害, 水疱性角膜症
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