論文抄録

第127巻第11号

臨床研究

IOLマスター700およびCASIA2から得られた角膜前面・後面・前後面の屈折力および乱視度数の比較
中尾 善隆, 木村 友剛
木村眼科内科病院

目 的:IOLマスター700とCASIA2の一致性を明らかにすること.
対象と方法:白内障患者247例247眼を直乱視・倒乱視・斜乱視群に分け,それぞれの群での両機種間の相関と一致性を検討した.統計解析は角膜前面・後面・前後面それぞれの屈折力(K値)と乱視度数(cyl値)を変数とし,相関分析とBland-Altman分析の手法で行った.
結 果:角膜前面K値とcyl値では,全群に機種間の正の相関(r=0.46~0.99,p<0.05)と0.25 Dを超える95%誤差の許容範囲(95%LoA)がみられ,cyl値では直乱視群と斜乱視群に比例誤差(r=0.25,-0.37,p<0.05)も存在した.角膜後面K値では全群に機種間の正の相関(r=0.99,p<0.05)と加算誤差(p<0.05)がみられ,倒乱視群には比例誤差(r=-0.26,p<0.05)も存在した.角膜後面cyl値では全群に機種間の正の相関(r=0.72~0.82,p<0.05)と,倒乱視群で比例誤差(r=-0.30,p<0.05)がみられた.角膜前後面K値とcyl値では全群に機種間の正の相関(r=0.46~0.99,p<0.05)と0.25 Dを超える95%LoAがみられた.角膜前後面K値では全群に機種間の加算誤差(p<0.05),倒乱視群に比例誤差(r=0.32,p<0.05)がみられ,角膜前後面cyl値では直乱視群と斜乱視群に比例誤差(r=0.30,-0.35,p<0.05)が存在した.
結 論:角膜前面・後面・前後面K値およびcyl値は全乱視群に機種間の相関がみられたが,誤差も含まれた.両機種の特徴を理解したうえで比較し,乱視用眼内レンズの度数決定などに役立てることが望ましいといえる.(日眼会誌127:1055-1062,2023)

キーワード
角膜屈折力, 角膜乱視度数, 角膜前後面, IOLマスター700, CASIA2
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〒737-0029 呉市宝町3-15 木村眼科内科病院 中尾 善隆
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