目 的:円錐角膜(KC)が疑われるも除外されたボーダーライン症例における角膜および眼球高次収差を検討する.
方 法:対象は,KCを疑われ精査目的で大阪大学医学部附属病院円錐角膜外来を受診したが,両眼ともに細隙灯顕微鏡およびPlácido角膜形状解析装置で異常を認めない患者(KC疑い受診群)とした.Scheimpflug角膜形状解析装置とHartmann-Shack式波面センサーの複合機を用いて角膜と眼球の高次収差を測定した.角膜前面・後面・前後面および眼球全体の瞳孔径4 mmの全高次収差,球面収差,コマ収差を健常眼(対照群)と比較検討した.
結 果:対象症例はKC疑い受診群〔n=14,年齢20.4±5.3歳(平均値±標準偏差)〕,対照群(n=14,年齢22.0±2.2歳)であった.KC疑い受診群の角膜後面および眼球全体の全高次収差(0.07±0.02 μm,0.15±0.06 μm)は対照群(0.06±0.01 μm,0.11±0.04 μm)よりも有意に高かった(それぞれp<0.05).またKC疑い受診群の角膜後面および眼球全体のコマ収差(0.03±0.01 μm,0.09±0.05 μm)は,対照群(0.02±0.01 μm,0.06±0.03 μm)よりも有意に高かった(それぞれp<0.05).角膜前面・前後面ではいずれの収差も両群で差がなかった.
結 論:KCを疑われるも除外されたボーダーライン症例では,角膜と眼球の高次収差がKCに類似しており,長期の経過観察が必要と思われる.(日眼会誌127:1063-1068,2023)