論文抄録

第127巻第12号

臨床研究

2019年度の全国新規視覚障害認定疫学調査の都道府県別解析:認定基準改正の影響
的場 亮1), 守本 典子1), 川崎 良2), 藤原 美幸1), 金永 圭祐1), 山下 英俊3), 坂本 泰二4), 森實 祐基1)
1)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学
2)大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学
3)山形市保健所
4)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科眼科学

目 的:2019年度の新規視覚障害認定の都道府県別の状況を明らかにすること.
対象と方法:全国の身体障害者手帳の管理部署(161部署)を対象に,2019年4月1日~2020年3月31日に新規に視覚障害の認定を受けた18歳以上の視覚障害者(以下,認定者)の数と属性についてアンケート調査を行い,全部署から回答を得た(回答率100%).得られた結果のうち,都道府県別の認定者数に関連しうる因子について線形回帰分析を行った.
結 果:全国の16,504人の認定者を解析した.18歳以上の人口10万人あたりの認定者数(以下,認定者割合)は,総人口に占める65歳以上の割合(以下,高齢化率)と有意に関連し,高齢化率が1%増加すると認定者割合が0.63人増加した(p=0.003,回帰係数0.63,95%信頼区間0.23~1.03).人口10万人あたりの眼科指定医師数(身体障害者福祉法第15条)および人口10万人あたりの眼科専門医数との有意な関連は認めなかった.認定者割合は,上位から高知県(35.6人),山口県(26.1人),島根県(23.5人)で,下位から栃木県(10.3人),岩手県(10.6人),石川県(10.7人)であった.2015年度と比較して,83.3%の都府県で認定者割合が増加していた.2015年度からの変化率について,上位から鳥取県(+111.8%),高知県(+89.8%),富山県(+77.1%),山口県(+75.2%),島根県(+74.7%)で増加し,最も減少した県は-34.6%と,都道府県によるばらつきが大きかった.原因疾患は全都道府県において緑内障が第1位であった.等級の割合に関して,1級と2級をあわせた割合が上位の都道府県は1位:佐賀県(72.6%),2位:福井県(71.6%),3位:茨城県(70.9%)であり,5級と6級をあわせた割合が上位の都道府県は1位:高知県(49.8%),2位:大阪府(35.8%),3位:岩手県(31.5%)であった.
結 論:認定者割合と高齢化率には正の関連が認められた.認定者割合は2015年度と比較し増加した県が多く,2015年度からの変化率は都道府県間でのばらつきが大きかった.この短期の変化には2018年7月に施行された視覚障害認定基準の改正が影響したと考えられる.(日眼会誌127:1095-1102,2023)

キーワード
視覚障害, 身体障害者手帳, 認定基準, 緑内障, ロービジョン
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