目 的:裂孔原性網膜剝離(RRD)の手術成績から非復位因子を後ろ向きに検討する.
対象と方法:2020年4月~2021年3月に初回手術を施行したRRD 404例412眼〔男性278例,女性126例,平均年齢52.6歳,Grade C以上の増殖硝子体網膜症(PVR)12眼を含む〕を対象とした.黄斑円孔網膜剝離,穿孔性眼外傷に併発したRRDは除外した.初回復位(A群)と非復位(B群)に分類し,術前因子(視力,原因裂孔の種類,剝離範囲など),術式,手術成績の関係を検討した.
結 果:A群が386眼,B群が26眼であった.術式は経毛様体扁平部硝子体切除術が316眼,強膜バックリング術が79眼,両者の併用が17眼であった.初回復位率は93.7%(RRD 94.2%,PVR 75.0%)であり,最終復位率は98.8%であった.術前因子の検討について,術前平均logarithmic minimum angle of resolution(logMAR)視力はA群で0.44,B群で0.72であり,B群が有意に不良であった(p=0.049).原因裂孔が下方,広い剝離範囲,PVRがB群で有意に多かった(いずれもp<0.01).下方裂孔に限定してサブグループ解析を行ったところ,下方の萎縮円孔に対する経毛様体扁平部硝子体切除術の成績が弁状裂孔に比べ有意に不良で(p=0.018),初回復位率が強膜バックリング術よりも劣る結果となった(p=0.026).裂孔数,強度近視や黄斑剝離の有無,術式で両群間に有意差はなかった.B群の26眼全例に対し再手術が施行され,再手術の原因は裂孔閉鎖不全とPVRがそれぞれ42.3%,新裂孔が15.4%であった.最終手術後6か月の視力はA群がB群よりも有意に良好であった.
結 論:RRDの非復位因子として,術前視力不良,下方裂孔,広い剝離範囲,PVRがあげられ,これらの因子を有する症例に関して対策を立てることが求められる.(日眼会誌127:85-91,2023)