論文抄録

第127巻第4号

臨床研究

学会原著
第126回日眼総会
メラノプシン含有網膜神経節細胞の網膜電図の季節変化
久瀬 真奈美1)2), 片岡 基1), 松原 央2), 福田 裕美3), 森田 健4)
1)松阪中央総合病院眼科
2)三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学
3)北九州市立大学国際環境工学部
4)福岡女子大学国際文理学部

目 的:メラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC)は,概日リズム調整の中心的役割を担う細胞であり,季節による影響が予想される.mRGCの電気的活動を季節別に記録し検討する.
対象と方法:正常人6例6眼(平均21.8歳)を対象とした.4原色刺激装置を用いたmRGC刺激光で網膜電図(ERG)を記録した.刺激光のピーク波長(nm)は633,593,508,468とした.明順応後,mRGCにのみ刺激を40%増した250 msecの刺激光を与え,5回応答を加算平均した.測定は朝/昼の2回,春秋の2季節に行った.記録数日前から測定終了まで生活リズムと光環境を管理した.
結 果:刺激後潜時の短い波形成分より順にN1,N2とした.朝/昼の振幅(平均値±標準偏差)(μV)は,N1:春56.3±14.5/35.9±16.4,秋19.7±13.9/21.6±20.9,N2:春39.9±19.8/29.4±10.0,秋24.0±7.6/32.1±18.6であり,潜時(ms)はN1:春161.7±24.9/161.1±17.1,秋147.3±33.5/152.3±38.6,N2:春400.8±56.6/382.8±62.9,秋406.4±45.4/414.9±78.3であった.朝/昼の変化について,振幅はN2秋以外で朝より昼に減少し,N1春のみ有意であった(p=0.046,paired t-test).潜時では各成分各季節ともに変化はなかった.季節間変化を朝/昼の差で比較したところ,N1振幅で有意差がみられた(p=0.021,paired t-test).N2振幅,N1およびN2潜時には有意差はなかった.
結 論:mRGCの機能は季節により変化する可能性が示された.(日眼会誌127:449-455,2023)

キーワード
メラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC), 網膜電図(ERG), 季節変化
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