背 景:ぶどう膜炎は中途失明の原因の一つであり,その長期予後は眼科医と患者の双方にとって非常に重要である.しかし,単一施設でそれらの眼合併症や視力予後などの臨床像を長期間観察して比較調査した報告は少ない.今回我々は本邦の汎ぶどう膜炎の3大原因疾患であるサルコイドーシス,Vogt-小柳-原田病(以下,原田病),Behçet病の長期経過を検討した.
対象と方法:北海道大学病院で100か月以上経過を観察できたサルコイドーシス34例,原田病39例,Behçet病36例を診療録より後ろ向きに調査した.
結 果:女性患者の割合はサルコイドーシスで76.5%,原田病で61.5%,Behçet病で41.7%であり,サルコイドーシスで高かった(p<0.01).視力予後不良例はサルコイドーシス(12.3%)や原田病(15.8%)よりBehçet病(45.5%)で多かった(p<0.01).緑内障の合併率や手術施行率に差はなかった.白内障の合併はBehçet病(83.3%)で多く,原田病(53.9%)で少なかった(p<0.01).硝子体出血はサルコイドーシス(6.2%)やBehçet病(6.1%)と比較して原田病(0%)で少なかった(p<0.01).サルコイドーシスでは囊胞様黄斑浮腫(13.9%)と網膜上膜(6.2%)が多くみられた(p<0.05).
結 論:ぶどう膜炎の原因疾患により長期視力予後や眼合併症の割合が異なる実態が明らかとなった.(日眼会誌127:456-462,2023)