目　的：2012年2月～2020年3月に単一施設で1,564眼に挿入した7種の多焦点眼内レンズ（IOL）の術後視力を検討すること．
対象と方法：焦点深度拡張型のTECNIS Symfony^Ⓡ Opti Blue^Ⓡとそのトーリック（以下，Symfony）716眼，低加入度数分節型のレンティスコンフォート^Ⓡ（以下，レンティスコンフォート）91眼，3焦点型のアクリソフIQ PanOptix^Ⓡシングルピースとそのトーリック（以下，PanOptix）179眼，2焦点型のLENTIS Mplus MF^Ⓡ，X^Ⓡとそのトーリック（以下，Lentis Mplus）203眼，TECNIS^Ⓡ Multifocal ZMB00（以下，ZMB）256眼，ZLB00 80眼およびZKB00（以下，ZKB）39眼について，術後1週および1～3か月の5 m，1 m，50 cm，30 cm裸眼および矯正視力を比較した．
結　果：術後1～3か月の等価球面度数の群ごとの平均値は-0.24～+0.05 D，柱面度数の平均値は-0.35～-0.17 Dで一部の群間に有意差があった（p＜0.0024）．5 m裸眼視力〔logarithmic minimum angle of resolution（logMAR）〕は術後1週でSymfony〔-0.02±0.13（平均値±標準偏差）〕がレンティスコンフォート（0.05±0.17）より有意（p＜0.001）に良好であったが，術後1～3か月ではすべての群間に差がなかった．術後1週の5 m矯正視力（logMAR）はSymfony（-0.09±0.07）がPanOptixとLentis Mplusより有意に良好であった（p＜0.001）．1 m裸眼および矯正視力はSymfony，レンティスコンフォートが術後1週，術後1～3か月ともにLentis Mplus，ZMBより有意に良好であった（p＜0.001）．50 cm裸眼視力は術後1週でSymfony，レンティスコンフォート，PanOptixが（ZKB以外の）2焦点型IOL群より有意に良好であった（p＜0.001）．30 cm裸眼および矯正視力は術後1週，術後1～3か月ともにPanOptixと2焦点型IOL群が良好で，Symfonyとほぼすべての比較で有意差があった（p＜0.001）．術後屈折値は予測屈折値に対して術後1～3か月に全群で遠視化（+0.01～+0.20 D）した．
結　論：Symfonyとレンティスコンフォートは5 m，1 m，50 cmの，PanOptixは4視距離すべての，4種の2焦点型IOL群は5 mと30 cmの視力が良好であった．（日眼会誌127：471-483，2023）