論文抄録

第127巻第4号

臨床研究

プロスタノイドFP受容体作動薬を使用する緑内障患者における眼瞼下垂手術後の涙液貯留量および自発性瞬目の変化
鍵谷 悠1)2)*), 渡辺 彰英2)*), 古澤 裕貴2), 横井 則彦2), 外園 千恵2)
1)町田病院眼科
2)京都府立医科大学眼科学教室
*)本論文で等しく貢献した共同筆頭著者

目 的:プロスタノイドFP受容体作動薬(以下,PG系点眼薬)使用中の緑内障患者への眼瞼下垂手術による涙液貯留量と瞬目の変化を明らかにすること.
対象と方法:2013年3月~2019年3月に眼瞼下垂手術(挙筋腱膜前転法)を施行した症例のうち,術後3か月まで経過観察できた症例で,PG系点眼薬を1年以上使用している緑内障患者10例19眼〔年齢76.5±5.1歳(平均値±標準偏差)〕を対象とした(PG群).対照群は同時期にPG系点眼薬非使用の104例159眼(年齢68.8±10.6歳)とした(非PG群).眼瞼下垂手術の術前・術後1.5か月・術後3か月での涙液貯留量(涙液メニスカス曲率半径R),自発性瞬目,挙筋機能,上眼瞼縁角膜反射距離(MRD-1)を検討した.
結 果:術前のR(mm)は,PG群で0.23±0.02,非PG群で0.30±0.01と,PG群で有意に小さく(p<0.05),術後3か月では,PG群で0.18±0.01,非PG群で0.25±0.01と,PG群で有意に小さかった(p<0.001).術後3か月の閉瞼時上眼瞼移動距離(以下,瞬目距離)(mm)はPG群で6.16±0.25,非PG群で6.90±0.15と,PG群で有意に短かった.術前後の変化として,PG群で術後1.5か月のMRD-1が+3.5 mmと有意に増加したが,開瞼時・閉瞼時の瞬目距離に有意な変化はなかった.PG群の術後3か月では瞬目距離が開瞼時で+1.0 mm,閉瞼時で+0.5 mmと術前より有意に増加したが,いずれも非PG群と比較して増加量が少なかった.
結 論:PG群では術前から涙液貯留量が少なく,術後さらに貯留量が減少すること,そして術後の閉瞼時瞬目距離が少なく,相対的な閉瞼不全を来すことが示された.(日眼会誌127:484-490,2023)

キーワード
眼瞼下垂, プロスタノイドFP受容体作動薬, 涙液減少, 挙筋腱膜前転法
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