論文抄録

第127巻第5号

臨床研究

日本人小児における0.1%フルオロメトロン点眼液の短期使用の影響についての検討
穂積 健太1), 矢ヶ﨑 悌司1)2), 横山 吉美1), 津久井 真紀子1), 市川 翔1)3), 城山 彰太1)
1)地域医療機能推進機構中京病院眼科
2)眼科やがさき医院
3)岐阜赤十字病院眼科

目 的:日本人小児における0.1%フルオロメトロン点眼液の眼圧への影響を調査すること.
対象と方法:2014年1月1日~2020年12月31日に地域医療機能推進機構中京病院眼科(以下,当院)において斜視手術を施行した15歳未満の小児斜視症例のうち,術後より1か月以上0.1%フルオロメトロン点眼液を1日4回術眼へ点眼し,ノンコンタクトトノメーター(NT-530,ニデック)を用いて眼圧測定が可能であった122例を対象とした.まず観察期間中に両眼手術を施行した58例を対象に点眼前と開始後1か月の眼圧の変化を左右眼に分けてそれぞれ比較した.左右で眼圧変化に差がないことを確認したのち,1症例につき1眼を採用した122例122眼を対象に,術前および術後眼圧,眼圧変化量について後ろ向きに調べた.また,10歳以上の症例と10歳未満の症例の2群に分けての比較検討も行った.
結 果:年齢は8.5±2.6:4~14歳(平均値±標準偏差:範囲)であり,内訳は男児57例,女児65例であった.術後1か月時点で,術前に比べて眼圧が6 mmHg以上上昇したのは122眼中2眼,眼圧が20 mmHg以上であったのは8眼,眼圧が20 mmHg以上でかつ術前に比べ6 mmHg以上上昇したのは1眼であった.右眼と左眼のいずれにおいても術前眼圧と術後眼圧に有意差はなかった(それぞれp=0.669,p=0.947).10歳未満の群と10歳以上の群で比較したところ,点眼前後の眼圧変化量には有意差を認めなかった(p=0.390).
結 論:0.1%フルオロメトロン点眼液は,1か月間の短期使用では小児において有意な眼圧上昇を引き起こす可能性が低く,小児を対象とした消炎治療においても安全に使用できる点眼薬であると考えられた.(日眼会誌127:543-548,2023)

キーワード
フルオロメトロン, 小児眼科, 斜視手術, ステロイドレスポンダー, 緑内障
別刷請求先
〒457-8510 名古屋市南区三条1-1-10 地域医療機能推進機構中京病院眼科 穂積 健太
hozumikenta@gmail.com