論文抄録

第127巻第5号

臨床研究

眼窩骨折の疫学・臨床所見の分析
桂 沙樹, 恩田 秀寿
昭和大学医学部眼科学講座

目 的:眼窩骨折患者の特徴を疫学的に調査すること.
対象と方法:2018年1月~2021年12月に昭和大学病院で眼窩骨折と診断された症例を対象とし,眼窩縁骨折や視神経管骨折を合併する症例は除外した.患者背景と臨床所見を調査した.
結 果:316例〔39.6±21.6歳(平均値±標準偏差)〕,男性226例,女性90例を対象とした.受傷機転は不慮の事故(138例,43.7%),スポーツ(124例,39.2%)の順に多かった.過去の報告と比較して不慮の事故とスポーツで占める割合が増えており,スポーツの種目も多様化していた.骨折部位は下壁骨折単独が201例(63.6%)で最も多く,次いでinferomedial orbital strutの骨折を伴わない内壁+下壁骨折が54例(17.1%)であった.骨折形態について,骨折片の転位のあるものを開放型,骨折片の転位のないものを閉鎖型とし,開放型が256例(81.0%),閉鎖型が60例(19.0%)であった.また,眼窩出血を8例(2.5%),眼球運動障害を114例(36.1%),鼻出血などの合併症を190例(60.1%)に認めた.眼内損傷を50例(15.8%)に認め,網膜振盪が37例で最も多かった.最終受診時に矯正視力が1.0未満の症例は3例(0.9%)あった.
結 論:過去の報告と比較して眼窩骨折の受傷機転の変化や多様化がみられ,社会的背景を反映していると考えられる.(日眼会誌127:557-562,2023)

キーワード
眼窩骨折, 疫学, 臨床所見
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