論文抄録

第127巻第6号

臨床研究

前眼部光干渉断層計を用いた内眼手術後の眼瞼形態の検討
鄭 暁東1), 細川 寛子2), 五藤 智子1)3), 浪口 孝治3), 水戸 毅4), 白石 敦3)
1)はなみずき眼科
2)南松山病院眼科
3)愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学講座
4)金沢医科大学眼科学講座

目 的:我々は以前に前眼部光干渉断層計(OCT)を用いた眼瞼断層像の解析法を報告した.今回,各種内眼手術後早期の眼瞼下垂を含めた眼瞼形態について検討したので,報告する.
対象と方法:2020年3月~2021年12月に,愛媛大学病院およびはなみずき眼科にて白内障手術〔以下,PEA群,70.2±6.3歳(平均値±標準偏差)〕,Ex-PRESS緑内障濾過手術(以下,EX群,72.1±4.7歳)および硝子体手術(以下,PPV群,69.1±4.4歳)を受けた年齢と性別をマッチさせた48例48眼ずつの3群を対象とし,前向きに検討した.術前,術後1週および術後1か月に前眼部OCT(CASIA2,トーメーコーポレーション社)を用いて上眼瞼をRaster方式にて撮影し,フロントモニター画面より上眼瞼縁―瞳孔中心距離(MRD1)を計測,断層像から ① 眼瞼厚(眼瞼頂点と角膜中心を通過する水平線の距離)および ② 眼瞼断面積(角膜頂点より頭側6 mmまでの眼瞼縁を囲む面積)を解析した.また,術後MRD1低下とそれぞれのリスク因子(年齢,術前の眼瞼挙筋機能,術中開瞼幅,手術時間など)との相関解析(単回帰分析)を行った.
結 果:術前のMRD1は,各群間で有意差はなかった(p=0.253,ANOVA).EX群のMRD1は,術後1週および術後1か月ともに術前よりも有意に低下した(それぞれp=0.033,p=0.028).PEA群およびPPV群では,術前後のMRD1に変化がなかった.眼瞼断面積については,EX群およびPPV群は術後1週で術前よりも有意に増大した(p=0.022,p=0.031).術後MRD1低下量は術前の眼瞼挙筋機能と有意な負の相関を(r=-0.367,p=0.037),術中開瞼幅と有意な正の相関を示した(r=0.387,p=0.021).
結 論:内眼手術後に眼瞼形態の変化を認め,緑内障濾過手術,術前の眼瞼挙筋機能低下および術中極大開瞼は術後の眼瞼下垂を引き起こすリスク因子として考えられる.(日眼会誌127:599-605,2023)

キーワード
眼瞼下垂, 緑内障濾過手術, 白内障手術, 硝子体手術, 前眼部光干渉断層計
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